みそ、納豆、ぬか漬け、甘酒、ヨーグルトなど、身近な発酵食品の魅力が、あらためて注目されているのをご存じですか?
発酵食品専門店や発酵食カフェが登場し、発酵あんこが話題になるなど、健康と美容を意識して、発酵食品を取り入れる方が増えています。
発酵食品といえば、お腹の調子を整える腸活のイメージがありますが、最近では、風邪や感染症などから体を守る免疫機能の維持を助ける効果(免疫力サポート)に期待が高まっています。
そこで、今回は、意外と知らない発酵食品のメリットや、免疫力サポートにおすすめの発酵食品をご紹介します。
発酵のチカラを味方につけて、いきいきと元気に過ごせる体づくりをはじめましょう。
発酵食品とは、菌、カビ、酵母などの微生物を利用し、食材を発酵させて作られる調理食品です。発酵によって、風味が良くなり、栄養もプラスされて、おいしさと健康の両方にいいことがたくさんあります。
具体的に、発酵食品には、どんなメリットがあるのかをみていきましょう。
発酵は、食材のおいしさを引き出す効果があります。
食材の発酵が進むと、糖やたんぱく質が分解され、独特の風味やうま味成分が生まれます。味がまろやかになって甘くなるので、元の食材よりおいしく感じられ、発酵によって醸し出されるにおいが、さらに食欲をそそります。
肉や魚は、菌が生み出す酵素の働きでやわらかくなって、食べやすくなります。
発酵食品は、発酵前の食材よりも、栄養価が高くなります。
たとえば、納豆は、発酵によって、ビタミンB群や葉酸が増え、ビタミンKなどの栄養素が作り出されるので、大豆のまま食べるよりも効率的に栄養補給ができます。
また、ぬか漬けは、米ぬかの栄養分が野菜に移り、乳酸菌も一緒にとれるようになります。
発酵食品に含まれる乳酸菌などの微生物は、腸内環境を良くする作用があります。
毎日続けて食べることで、腸や体の調子を整えて健康を守るのに役立ちます。
腸内環境の状態が悪いと、腸の免疫機能が低下し、感染症などの病気にかかりやすくなります。
また、発酵すると消化吸収がしやすくなり、胃腸への負担が減るので、幅広い年代の方の栄養補給に役立ちます。
発酵は、食べ物の保存性を高めて、日持ちを良くします。
発酵で微生物が増えると、腐敗菌がつきにくくなり、そのままでは腐りやすい食材でも、安全に保存ができます。
冷蔵庫がなかった時代から続く、食べものを無駄にせず長く楽しむための貴重な知恵です。
発酵食品は、おいしく食べるだけで、足りない栄養を補給しながら、お腹の調子も整えてくれるなど、嬉しいメリットがいっぱいあります。
数多くある発酵食品の中から、免疫力サポートにつながるおすすめの食品を5つ選びました。近所のスーパーでも手に入りやすいものばかりですので、ぜひ気軽に取り入れてみて下さいね。
塩麹は、麹菌で発酵させた米麹に、塩と水を加えて作られる調味料です。
エネルギー代謝にかかわる栄養素のビタミンB1が含まれていて、疲労感を和らげ、免疫機能の維持を助けます。
塩麹で肉や魚、野菜などを漬けたり、和えたりすると、食材のうま味が引き出されます。
まろやかな塩味とほのかな甘みがあるので、たれやドレッシングなどに使ってもおいしくいただけます。
炊いた米やもち米を麹菌で発酵させた甘麹は、米に含まれるでんぷんがブドウ糖に、たんぱく質がアミノ酸に変化して、甘くおいしくなります。
甘麹には、ブドウ糖や必須アミノ酸、ビタミンB群などがたっぷり含まれていて、栄養補給や疲労回復の効果があり「飲む点滴」と呼ばれるほどです。冬に飲むイメージですが、昔は夏バテ予防に利用されていました。
自然な甘さを利用し、果物やヨーグルトと合わせてデザート感覚でいただいたり、砂糖代わりに料理で使ったりするのもおすすめです。
甘麹を飲みやすく薄めたものが甘酒で、お正月やひな祭りに飲む風習があります。
酒といいますが、米麹から作られたものは、アルコール度ゼロなので、お子さんや妊娠中の方でも安心していただけます。
日本の代表的な漬物であるぬか漬けは、きゅうりや大根などの野菜を、ぬか床に漬け込み、植物性の乳酸菌や酵母で発酵しています。
米ぬかに含まれるビタミンB群などの栄養素が、野菜に移るので、漬ける前より栄養価が高くなります。ビタミンB群は、疲労回復効果があり、疲れによる免疫力低下を防ぎます。
さらに、乳酸菌と野菜のビタミンCや食物繊維を一緒にとることで、腸内環境を整えて、お腹の張りや便秘など不快な症状の改善に役立ちます。
最近の研究では、ぬか漬けに、脳をリラックスさせる働きを持つ脳内神経伝達物質GABA(ギャバ)が含まれるとわかり、安眠効果も期待できます。睡眠にお悩みのある方は、晩ごはんや夜食にぬか漬けを足すといいでしょう。
蒸した大豆を納豆菌で発酵させた納豆は、独特のにおいで好き嫌いが分かれますが、栄養効果はとても高いので、ぜひ積極的に食べて欲しい発酵食品です。
納豆の原料である大豆は、畑の肉といわれるほど良質なたんぱく質が豊富に含まれています。女性ホルモンに似た働きをする成分のイソフラボンもとれるので、更年期世代の栄養補給にぴったりです。
ネバネバ成分のポリグルタミン酸は、吸水力があり、腸内の老廃物の排泄をうながし、お通じをスムーズにする効果が期待できます。
さらに、発酵により発生する成分のジピコリン酸は、抗菌、抗ウィルス作用があり、免疫力サポートを後押ししてくれます。
牛乳を乳酸菌で発酵させたヨーグルトは、腸活に欠かせない発酵食品です。
ヨーグルトの豊富な乳酸菌は、腸内環境を良くする作用があり、便秘の予防や改善のほか、自律神経の調整を助ける作用もあります。また、カルシウムも豊富なので、歯や骨を強くし、骨粗しょう症の予防にも役立ちます。
ヨーグルトに含まれる乳酸菌には多くの種類があり、腸内環境に合うものは人それぞれ違うといわれています。相性の良いヨーグルトを選ぶには、同じものを1週間ほど食べて、お腹の調子を確かめましょう。
乳製品が苦手な方や牛乳アレルギーの方は、豆乳を発酵させて作られる豆乳ヨーグルトはいかがでしょうか。植物性たんぱく質とイソフラボンが豊富で、女性に必要な栄養を手軽に補給できます。
酢は、穀物や果物に麹と水を加えて発酵させたアルコールを原料に、酢酸菌で発酵させて作られます。世界最古の発酵調味料といわれるほど大昔から世界中で重宝されてきました。
すっぱい成分の酢酸やクエン酸が、疲れの原因になる乳酸を分解して、疲労感を和らげます。
胃酸の分泌をうながして、胃や腸に刺激を与え、動きを活発にし、食欲を高めたり、消化をうながしたりする効果も期待できます。
さらに、便通の改善や血行促進、代謝を高める、カルシウムの吸収を助けるなど、さまざまな作用が認められています。
発酵食品のメリットや、免疫力サポートにおすすめの発酵食品をご紹介しましたが、いかがでしたか?
発酵食品は、乳酸菌や納豆菌などのはたらきで腸内環境を整えて、私たちの健康を守る免疫力の維持を助けてくれます。
今回ご紹介した発酵食品は、手に入りやすく、値段も手ごろなので、いつものお食事に1品プラスすることからはじめてみましょう。
《参考書籍》
『女子栄養大学の発酵食のすべて』
女子栄養大学副学長 五味紀春監修 古川知子レシピ監修 株式会社エクスナレッジ発行
『すべてがわかる!「発酵食品」事典』
小泉武夫・金内誠・館野真知子監修 株式会社世界文化社発行
《参考URL》
全国納豆協同組合連合会 納豆PRセンター
「納豆の健康効果」「ジピコリン酸」
http://www.natto.or.jp/kenkou/nattokin/nat10.html
管理栄養士 山田 由紀子
乳幼児からご高齢者まで延べ1000人以上の栄養指導・食事相談を10年以上実践。
食情報の専門家として、栄養・料理・健康にかかわる記事の執筆、監修、レシピ作成等を行うほか、健康料理教室、味噌づくり教室、梅仕事の会を主催。
体質改善ではじめた発酵食づくりに魅了され、味噌、甘酒、塩麹、豆乳ヨーグルト、ぬか漬け、天然酵母パンなどを自宅で作り、「腸から元気になる食事」の研究に邁進中。