暖かく過ごしやすい春がやってきましたが、「なんだかだるい、やる気が出ない」などの不調を感じていませんか?
春先に感じる不調は、「春バテ」といわれ、寒暖差や環境の変化に合わせて無理をすることで、ストレスがかかり、疲れやすくなるのが原因です。
おもな症状は、だるさ、疲労感、めまい、頭痛、イライラ、落ち込みなどがあり、心身両方に起こります。
今回は、春バテ対策のひとつとして、酵素を取り入れて、代謝を上げる食事のとり方をご紹介します。
代謝が上がると、体内の老廃物や疲労物質などが排出されやすくなり、だるさや疲労感を和らげてくれます。
もし、酵素が不足して代謝が下がると、春バテの不調につながるだけでなく、免疫力にも影響して、花粉症の症状も出やすくなります。
酵素不足にならないための食材選びと調理法のコツについて解説していきます。
おすすめの酵素食材と、とり過ぎに気をつけたい食材もご紹介しますので、ぜひ春バテ対策の食事改善にお役立てくださいね。
食事から酵素をしっかりとって不足させないために、大切なポイントが食材選びです。
酵素が多く、ビタミンやミネラルなどの栄養素も豊富な食材を積極的に選んで、酵素が少なく、消化の悪い食材をなるべく減らすのが、食材選びのコツになります。
おすすめの酵素が多い食材と、とり過ぎに気をつけたい食材をみていきましょう。
生の果物には、食物酵素が多く含まれています。
新鮮なものを選び、熱を加えずに食べれば、酵素を効率的にとり入れることができます。
また、果物は皮の近くに、酵素や栄養が豊富です。りんごやぶどうなど皮ごと食べられる果物は、オーガニックを選ぶと安心です。
ただし、果物は果糖も多いので、食べすぎは良くありません。1日あたり200~300g程度の量にしましょう。
パイナップルは、たんぱく質分解酵素「ブロメライン」が含まれていて、肉や魚と合わせると、消化を助けてくれます。
ビタミンB1、B6、C、クエン酸なども豊富で、疲労回復や美肌対策にも効果的。
缶詰は、加熱処理されていて、酵素の効果は期待できないので、生のパイナップルを選びましょう。
キウイフルーツには、たんぱく質分解酵素「アクチニジン」が含まれています。
最近人気の甘いゴールデンキウイより、酸味のあるグリーンキウイのほうが、酵素が多いので、グリーンを選ぶのがおすすめです。
ビタミンCのほか、フラボノイドなどのフィトケミカルや食物繊維、有機酸も豊富で、免疫力サポートや疲労感の解消にも役立ちます。
いちごは、脂肪分解酵素「リパーゼ」のほか、ビタミンC、カルシウム、葉酸、カリウム、マグネシウム、食物繊維などを含む栄養豊富な果物です。
とくにビタミンC含有量は、果物の中でもトップクラス。いちごを7~8粒(170g程度)食べれば、1日の摂取基準量100mgを満たせます。
ポリフェノールも多く、抗酸化作用が強いため、美肌効果や春先にひきやすい風邪予防にも効果的です。
りんごは、強い抗酸化力を持つりんごポリフェノールが豊富で、春の紫外線によるシミやそばかす対策におすすめです。
また、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸は、春バテによる疲れやすさを和らげます。
水溶性食物繊維のペクチンは、腸の調子を整えて、腸内の有害物質を体外に出すはたらきがあり、便秘や下痢の解消に役立ちます。
生野菜には、食物酵素が多く含まれています。
果物と同様に、新鮮な旬の時期の野菜を選ぶようにしましょう。
熱を加えると、酵素の効力が失われるので、生のままで食べるのがいいですが、野菜によっては生で食べられないものや、消化が悪い場合もあります。
また、生野菜には体を冷やす作用もあるので、季節や体調に合わせて、食べる量を加減して下さい。
大根は多くの酵素を含みますが、代表的なものは、デンプン分解酵素の「アミラーゼ」です。大根おろしと、そばやごはんなど炭水化物(デンプン)を一緒に食べると、酵素のはたらきで消化がしやすくなります。
皮の近くにビタミンCが豊富なので、皮ごとすりおろしていただきましょう。
キャベツは、デンプン分解酵素の「ジアスターゼ」を含み、消化を助けて、胃の不調を和らげる効果があります。
豊富なビタミンUは、別名「キャベジン」と呼ばれ、胃潰瘍や胸やけの予防効果が期待できます。
トマトは、酵素のほかに、ビタミン類やミネラル類も多く、ヨーロッパでは、「トマトが赤くなると医者が青くなる」といわれるほど、栄養価の高い食べ物として知られています。
赤い色素のリコピンは、強い抗酸化力で、活性酸素を抑えて、美肌対策に役立ちます。
酸味成分のクエン酸やリンゴ酸には、疲労の原因となる乳酸を分解する働きがあり、春バテ解消に効果的です。
セロリは、独特な香りの成分アピオイルとセネリンが含まれ、精神を落ち着かせる効果や食欲増進効果があります。
βカロテンやビタミンB群、C、E、食物繊維などの栄養素も多く含まれています。
春バテの症状であるイライラや落ち込みを感じたら、新鮮なセロリを選んで、セロリスティックやサラダにするのがおすすめです。
納豆、甘酒、ぬか漬け、キムチ、生みそなどの発酵食品は、酵素の働きを活かして作られています。
発酵食品には酵素のほかに、乳酸菌やこうじカビといった微生物が含まれ、腸内環境や免疫機能のバランスを整える作用で、春バテ対策に貢献します。
発酵食品は常備して、毎日、少しずつでも続けて食べることが大切です。
砂糖のとり過ぎは、糖尿病や肥満、虫歯の原因になることは広く知られています。
また、糖質を消化する過程で、ビタミンB1が使われるので、過剰になると、ビタミンB1不足から疲れやすくなり、食欲不振に陥る可能性があります。
酵素食材をしっかりとっていても、砂糖をとり過ぎると、良い効果が表れにくくなります。甘いものが欲しいときは、ケーキより果物を選んで、満足感を得るようにしましょう。
肉や魚などの動物性たんぱく質は、大切な栄養ですが、極端なとり過ぎは禁物です。
ご飯や野菜、豆腐などよりも、消化のために胃腸へ負担がかかります。
肉や魚ばかりに偏らず、豆腐や豆乳、豆類などの植物性たんぱく質もバランスよくとるように心がけましょう。
インスタントラーメンや冷凍食品、ハム、ソーセージなどの加工食品には、酵素がほとんど含まれません。また、食品添加物や塩分、砂糖が多く使われている場合があります。
サラダや果物などの酵素食材を、一緒に食べるなど、工夫しながら、食べすぎないように気をつけましょう。
酵素は、熱に弱いので、加熱せずに食べるのが基本です。
酵素を効率的にとり入れるためには、どのような調理法が良いのかをみていきましょう。
生野菜や果物を食べやすく切って、調味料やドレッシングなどであえます。
野菜サラダ、フルーツサラダ、和え物など、生の食材をシンプルに味わいます。
ドレッシングは、オリーブオイル、酢、塩コショウなどをお好みで混ぜて手作りすれば、余計な糖分や添加物をとらずに、安心していただけます。
大根おろしや、すりおろしりんごのほか、トマトや人参おろしはドレッシングに使うと、おいしくて酵素たっぷりの1品に。
時間がたつと、酵素の効力が減ってしまうので、食べる直前にすりおろすのがコツです。
生野菜や果物をジューサーでしぼった、フレッシュジュースなら、食欲のない時でも手軽に酵素補給ができます。
スローな速度でしぼる低速ジューサーは、栄養素や酵素を破壊しにくいのでおすすめです。
バナナやアボカドなど柔らかい果物は、水や牛乳を加えて、ミキサーでスムージー風にすれば、食物繊維も一緒にとれます。
生野菜をそのまま食べにくい場合は、酢漬けにして常備菜に。
酢の主成分の酢酸は、疲労回復効果があります。すっぱい味が苦手な方は、りんご酢や黒酢、バルサミコ酢など甘みのある酢を使えば、食べやすくなります。
酵素不足にならないための食材選びや調理法のコツについて説明してきましたが、いかがでしたか?
酵素をとり入れるには、生の果物、生野菜、発酵食品など、酵素や栄養が豊富な食材をよく食べ、砂糖、肉や魚、加工食品など、酵素が少なく消化しづらい食材を過剰に食べすぎないのが、大切なポイントです。
食材は新鮮なものを選び、果物や野菜はオーガニックなら、より安心して食べられます。
酵素は熱に弱いので、生のまま切って調味料で和える、すりおろす、ジューサーでしぼる、酢漬けにするなどの調理法なら、酵素を十分にとり入れることができます。
いつもの食事に、酵素食材をプラスして、春バテ対策をはじめてみませんか?
《参考URL》
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2020年版)
ビタミンC 2-1.成人・小児(推定平均必要量・推奨量)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4x.pdf
《参考書籍》
『超・酵素フード&ジュースレシピ』
鶴見隆史著 牛尾理恵料理 成美堂出版発行
管理栄養士 山田 由紀子
乳幼児からご高齢者まで延べ1000人以上の栄養指導・食事相談を10年以上実践。
食情報の専門家として、栄養・料理・健康にかかわる記事の執筆、監修、レシピ作成等を行うほか、健康料理教室、味噌づくり教室、梅仕事の会を主催。
体質改善ではじめた発酵食づくりに魅了され、味噌、甘酒、塩麹、豆乳ヨーグルト、ぬか漬け、天然酵母パンなどを自宅で作り、「腸から元気になる食事」の研究に邁進中。